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楽園の世捨て人 [book] ['17 海外編]

sample5.jpgトーマス・リュダール/早川書房/お薦め度 ★★★★

ガラスの鍵」賞受賞作

海岸、車の後部座席、段ボール箱・・・餓死した生後13ヶ月の男の子が見つかる。

前期高齢者のタクシー・ドライバーピアノ調律師のエアハート、警察の捜査に業を煮やし、娼婦に金で証言をさせようとしていることを突き止め、出廷日まで娼婦を監禁?する。怠惰に歳を重ねた世捨て人、エアハートが何故かしら事件の真相を追う。

監禁したはずの娼婦が屋根から飛び降り?死亡、友人夫婦の妻が暴行され、夫は行方不明。妻の達ての願いにこたえ、妻と娼婦を入れ替える。何かにとりつかれたように行動派へ転身するエアハート。

幼い男の子の餓死に端を発した事件はあらぬ方向へ大きく舵を切る。真相を追えば追うほど、エアハートも読者も混迷の度を増す。前期高齢者、素人探偵?は事件を解明出来るのか?

500頁超の大作、混迷に付き合うには少々長いかな!?


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紳士と猟犬 [book] ['17 海外編]

sample1.jpgM・J・カーター/早川書房/お薦め度 ★★★★

MWA賞ノミネートの歴史ミステリー

イギリス東インド会社:当初は香辛料貿易を主に行っていたが、次第にインドに行政組織を構築、軍隊を保持して反乱鎮圧や他国との戦争を行う、インドの植民地統治機構へと変貌していく。

イギリス東インド会社に所属する純粋で無知な?少尉、エイヴリーと現地に溶け込んでいる変わり者?の探偵ブレイクが行方不明の小説家マウントスチュアートを探すお話。

カルカッタからジャバルブルへ通常なら二ヶ月かかるところを三週間で行き着く間に、エイヴリーとブレイクの人となりが明らかになっていくが、行方不明の小説家の情報は読者には皆無。

ジャバルブルのサグ(盗賊団)対策本部にやっとの思いで到着するあたりからブレイクの隠密活動が功を奏し、マウントスチュアートの情報が断片的ではあるが入ってくる。

捜索の旅はまだまだ続く、その過程でドゥーラ藩王国の藩王を虎の襲撃からエイブリーが助けたり、サグに襲われた先で偶然にもマウントスチュアートに出会ったりと冒険劇満載!

最後の最後に物語のからくりがあきらかになるのだが、エイブリーとブレイクの対応が東インド会社の行く先を示すことになる!?

冒険、歴史小説として読み応え十分!途中から続きがありそうな予感を持ちながら読み進む。案の定すでに第三作まで本国では出版されているそうだ。邦訳を期待したいシリーズ。


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伊賀の残光 [book] [青山文平]

sample1.jpg青山文平/新潮社/お薦め度 ★★★★

「流水浮木ー最後の太刀ー」改題

「伊賀の残光」の方がはるかにいい表題!

主人公、山岡晋平は鉄砲百人組の老武士、門番のお役目はひと月に四、五回ほど、その他はサツキの栽培によって生計を補っている。

門番のお役目ではあるが時代の変遷とともに、その役割は形ばかりのものとなっていた。山岡も伊賀衆ではあるが伊賀を知らない世代であった。

事件は同心の友が殺されることから始まる。下手人はすぐに捕まるが移送の途中、誰も気づかない鮮やかに手口で刺殺される。

事件の謎を探るなか、伊賀衆の伊賀に対する思い、伊賀衆ならではの隠密御用を知ることになる。しかも山岡の友、ふたりはその隠密御用に加担していた・・・

また、友のひとりが隠密御用の最中殺されるに至り、その御用の始末をつけることを決意する山岡・・・

時間の経過、戦のない世界、財政ひっ迫、とともに武士の生きざまも変化せざるを得ない時代。そんな時代をひょうひょうと生き抜く山岡の生きざまが清々しい。


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約定 [book] [青山文平]

sample1.jpg青山文平/新潮社/お薦め度 ★★★★

六編収録の短編集

六編のなかに昨年、「このミス・・・」で国内編4位となった「半席」の一編が収録されている。

表題の「約定」、果たし合いの約定を指す。21年前、父親、望月三郎が武士の一分が立たないということで腹をめした。その息子、清心郎も果たし合いの装束で父と同じように腹をめす。

望月三郎の死は名族、望月氏の末裔であることを疑われたことで武士の気骨を示すためのものだった。息子、清志郎はなぜ果たし合いをすぐに申し込まなかったのか?清志郎が果たし合いを申し込んだのは父の死から十八年後・・・

果たし合いを申し込まれた野添信一郎と清志郎は竹馬の友、果たし合いの期日を三年前に約定した。しかし、清心郎の前に真一郎は現れなかった。なぜ?

お互いに「慮る」ことから起こった事件!?「かけおちる」と同様に慮るがキーワード。


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かけおちる [book] [青山文平]

sample1.jpg青山文平/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆

「欠け落ちる」

その一、二十二年前、かけおちた妻を追った阿部重秀、今は藩の執政、いわゆる「妻仇討ち」。

その二、当時、四歳の娘が母親と同じになってかけおちた。娘故、連れ戻される。

その三、娘に婿殿を迎える。その婿殿は江戸詰め。娘が再び阿部重秀の知恵袋、森田啓吾とかけおちる。

その四、阿部重秀と「妻仇討ち」にあったはずの妻がかけおちる。

妻と娘の女心の真実はいかに?重秀の変心の真実はいかに?

キーワードは「慮る」(おもんぱかる)。妻が夫、重秀の何を慮ったのか、娘が婿殿の何を慮ったのか、最後に夫、重秀が妻の何を慮ったのか・・・

読了感爽やかな青山ワールドでした。


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